ブログ

読んだ本:『ロゴデザインの現場 事例で学ぶデザイン技法としてのブランディング』

Category: diary , web

先日のKindleセールにてゲットした『ロゴデザインの現場』を読了いたしました。
とてもタメになり、見ていてとても楽しかったので買ってよかったな〜!と思いました。
早速レビューしてみます!

この本について

書影およびデータ

タイトル:『ロゴデザインの現場 事例で学ぶデザイン技法としてのブランディング』
著者:佐藤浩二,田中雄一郎,小野圭介
出版社:エムディエヌコーポレーション
発行年:2016年
ジャンル:デザイン

あらすじ

デザイナーの制作領域の多元化はよりいっそう進んでおり、幅広い制作物に対応しつつ、「ブランディングの視点をもってトータルにデザインしていく能力」が求められています。企業やブランドだけでなく、地域、行政、教育、街づくりなどにデザインの力で参加し、貢献していく気鋭デザイナーの制作現場に密着。クライアントへのヒアリング、アイデアスケッチ、ラフ制作、プレゼンテーション、デザインの精緻化、ガイドラインの作成と、すべての工程を詳らかにすることで、デザイナーという職業の実際、そして「デザインの今」に迫ります。

Amazon紹介文より

読んだきっかけ

前提としてわたしは紙デザインやブランディングを含めたデザインをあまり経験せずに、Webのデザインをほぼ専門にしているということもあり、スクールの授業や課題でロゴを作った経験以外、実務ではほとんどロゴデザインをすることがありませんでした。そのため、ロゴをデザインすることに関してははっきりいって苦手分野です。

たまたまKindleセールのちょっと前に、ロゴについて考えることがあり、そのタイミングでセールのラインナップを眺めていたらこちらの本が目に留まりました。中身のサンプルを見て、これは良さそうかもと思って買ってみたところ、個人的に大当たりでした。

感想

特に気に入ったのは、ヒアリングからロゴの提案、納品までのブラッシュアップの流れを案件ごとに何例も掲載してくれている点です。

ロゴの事例がずらずら並んでいるだけ、とかIllustratorで作図するのをHow toで見せるだけ、とかの本では、確かにいろんな作品を見ることもデザインテクニックを学ぶことも大事なんですが、ロゴ制作の肝心のところが知れません。

つまり、クライアントの要望をどうデザインに落とし込むべきか、という点と、
ロゴ提案時にどういったプレゼンテーションをしているのか、という点、
そしてロゴ制作のみにとどまらない、その後の展開の仕方の想定といったトータルブランディングの視点
これらがまさに知りたいところなので、事例ひとつにつきページを多くとって紹介してくれているのが非常によかったです。

当然ながら、ロゴというのは企業(団体・サービス)の「顔」であり、ロゴには理念や伝えたい思いを象徴として表すものです。このロゴを見ればあの企業だ、とわかる代名詞的なものでもあります。ロゴデザインを任されるということはそれだけ責任が重い仕事だと思います。それに、一度納品したら数多くの印刷物や看板に使われるため、修正したくても差し替えることはできないので、入念に仕上げなければならない。文字の線一本とっても、非常に細かい調整をして精度の高いロゴを納品しているというプロの仕事ぶりの過程を見ることができます。

また、わたしは経験がないのでまったく知らなかったのですが、ロゴを作る場合は(案件規模によって有無は異なるでしょうが)封筒や名刺などの印刷物に使用した場合のデザインも同時に提案するんですね。確かにロゴ単独で見るのと、文字情報と組み合わせて見るのでは印象が違って見えます。ロゴを依頼されたからといってロゴだけを見せるんじゃないんだなぁと知って、へえ〜!となりました。

著者の3名のデザイナーさんはどの方もクライアントからの生の声をヒアリングして、言葉の裏にひそんだ思いを拾いあげてロゴに反映させています。クライアントから依頼される仕事は、紙でもロゴでもWebでも、何よりもヒアリングと方向性の双方間の確認・認識の共有が重要だと思うので、ロゴデザインひとつ決まるまでにこれだけの苦労があるのも当然といえます。

話は脇にそれますが。
巷で格安ロゴを作るサービスなども見かけますが、ロゴという自分たちの会社の印象を左右する大事なものをそんなに格安で済ませてしまっていいのかしら…と若干思ったりします。ターゲットによっては格安商売もありかもしれませんが…
ただ、こういったサービスを先に見てしまうと、「こんなに早く安くロゴを作ってくれるところもあるのに、なんでロゴ一つに時間とお金がこんなにかかるの?」と思うお客さんも多いだろうなぁと思います。

もちろん納期って予算との兼ね合いだったりケースバイケースではありますが、
ヒアリングから初回プレゼンテーションまで2週間〜1ヶ月、その後の候補の絞り込み、ブラッシュアップや成果物(ロゴデータやガイドライン)の制作…と全体で見たら数ヶ月に及ぶものだと考えると、決して安い値段でできることではないですよね(とクライアントに説明するのもデザイナーの仕事ですね…)。

逆にデザイナーも「ロゴなんて適当にイニシャルとかモチーフ入れれば簡単に作れる」って思いながらロゴを作ってしまったり、ヒアリングをせずクライアントの思いを汲み取らずに見栄えだけ求めて作ってしまったり、なんて経験がある人はぜひ読んでほしいと思います。

デザイナーに求められているものって、言われたものを作るだけではなくて…。企業やサービスがきちんとしたロゴをもつこと、その必要性を説くこと、そして説得力のあるロゴを作ること、そのロゴをどのように企業のこれからに生かしていくのか…そういったことを考えるのもデザイナーに必要なスキルだということがよくわかりました。
未来を見据えたブランディングを含めてものづくりしていくデザイナーでありたいなと思わされる1冊でした。

※余談ですがつい先日ブログカテゴリは4つから増やさない宣言しましたが「デザイン」のカテゴリも必要かも…と思いはじめました。
デザインといってもほぼWebの話になる想定だったので作ってなかったということもあり、今のところはWeb以外のデザインに関する記事はタグで分類しておきます。記事が増えてきてデザインを単独カテゴリとして扱った方がいいと判断したら、増やすことにします。

一覧にもどる

ページトップにもどる