読んだ本:『なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉』

Kindleセールでここぞとばかりに手に入れた『なるほどデザイン』を読了しました。わたし的には本当に買ってよかった!と感じた、とてもタメになる本でした!
読了してから1ヶ月ほど経ってしまいましたが、この本は紙デザインに慣れてない人にも、これからデザイン全般を学んでいく人にも非常におすすめです!
今回は読書感想ブログを書きました。
この本について
書影およびデータ
タイトル:『なるほどデザイン〈目で見て楽しむ新しいデザインの本。〉』
著者:筒井 美希
出版社:エムディエヌコーポレーション
発行年:2015年
ジャンル:デザイン
あらすじ
〜目で見て楽しむ新しいデザインの本!〜
「デザイン=楽しい」を実感できる新しいデザイン書籍。
デザインする上で必要な基礎、概念、ルール、プロセスを図解やイラスト、写真などのビジュアルで解説しています。
現場で活躍しているデザイナーが身近にあるわかりやすいものに例えたり、図解、イラスト、別のものに置き換えて見方を変えてみたり…
豊富なビジュアルとともにわかりやすくひも解いた、楽しみながらデザインのあれこれがわかる「なるほど!」と思える内容が盛りだくさんです!Amazon紹介文より
読んだきっかけ
この本はDTPのデザインについて書かれていますが、デザインを考える上で必要な視点というのはDTPでもWebでも共通しています。
もちろん、わたしがDTPに弱いからもっと向上したいという意味もありますが、実はWebデザインのマンネリというか、ちょっと自分のデザインがパターン化してきていることが気がかりで、改めてデザインのインプットをしようと思ったのが、最近デザイン本をあれこれ読んでいる理由です。
感想
全体的に、雑誌や書籍の誌面デザインがメインになっています。
本書では3つの章に分かれており、どの項も「デザインで伝えたいメッセージ」「見た人に与えたい印象」「クオリティを上げる秘訣」をあますところなく意識した作りになっています。
文字の説明よりもまずはデザイン例を見せてからの解説という形になっているので、タイトル通り、「目で見て楽しむ」+デザイン力を上げる…という、非常に良い構成の本だと思います。
それぞれの章について、紹介していきましょう。
第1章 編集×デザイン
第1章は、料理の写真とレシピのテキストを使って、どの層に向けた本なのかによってレイアウトやメリハリに差をつけている例を紹介しています。
また、実際に読者とデザインステップを踏むように、図解ラフからブラッシュアップまでを丁寧に見せています。最後のブラッシュアップに至るまで少しずつ、フォントや配置、飾り付けが変化していき完成するまでが見れるので、こういうのはとても助かります。
見ながら、「ああわたしだったら、ここで決めた配置にとらわれてしまってこんな風に変えることできないかも…」ってドツボに入っちゃいそうだな…と思いました。
このデザインで見せたいのは、知らせたいのはなんなのか。
ということを考えるのはデザインにおいて当然のことなんですが、実際に手を動かしていると、迷いに迷って見失ってしまいそうになるんですよね…
こうやってデザインがラフからどんどん形になっていく過程で、最初と完成形で変化した部分を眺めると、確かに意図がはっきりした!と気づかされます。
第2章 デザイナーの7つ道具
第2章は「デザイナーの7つ道具」と称して、デザインを決めるときに大事にするべき視点・ポイントを見せています。
特に「どっちが大事?」という視点(ダイジ度天秤)は常に欠かさず持っていたいなと思います。
本の中でダイジ度天秤の例として書かれている、
料理教室についてのデザイン。
「綺麗なキッチンで、素敵な先生が教えてくれる料理教室=教える場所と人が大事」
「たくさんの料理、たくさんのジャンルを習える料理教室=教わるメニューが大事」
と、より大事な「伝えたいこと」はどれか?と情報を整理することで、デザインで見せるべき要素がまるで変わります。
・教える場所と人が大事=おしゃれなキッチンスタジオの内装や先生の写真を目立たせ、料理の写真はあしらい程度に。
・教わるメニューが大事=習える料理の写真を見栄え良くたくさん載せ、先生やスタジオの写真は控えめに。
このように、それぞれのパターンのデザインを見せられると、デザインによって伝えたいことの違い・伝わることの違いがガラリと変わることがわかります。
商品であれば、大事なのは機能性なのか、豊富なカラバリなのか、などデザインの主役になる商品やサービスのどこが一番の売りポイントなのか、ということを考えてデザインしましょうということですね。
他にも、
・デザインの主役に、よりスポットライトが当たるようにする方法。
・書体や組みを声や話し方に例えて、イメージに合わせた文字組みをする方法。
・主役のコンセプトから言葉の連想→イメージの連想をしてデザインを広げる方法。
・言語(文字情報)を非言語(図や写真といったビジュアル)に翻訳する方法。
・そして細部のブラッシュアップのコツ、目の錯覚による大きさの違いを揃える等見た目にこだわるためのコツ。
・最後に、デザインの内容と、届ける相手への「愛」。
という7つのポイントを、多くの例を提示しながら説明してくれています。
7つとも、それぞれ詳細に紹介したいくらいなのですが、ぜひご自身で読んで見ていただきたいです。
第3章 デザインの素
第3章は文字と組み、言葉と文章、色、写真、グラフといった、デザインを構成する要素ひとつひとつについて、考えを深める内容になっています。
「文字と組み」は、書体について詳しく書かれています。
DTPで使われる文字・組みの基本的な用語から、フォントの種類、文字間やウェイト、サイズの変化によってどんな印象を与えられるかまでを解説。
次項の「言葉と文章」とも繋がります。
「言葉と文章」は、タイトルやリードなどの、そのテキストが持つ役割「らしさ」を与えるコツを一枚の紙面デザインを例に説明しています。
例えば、タイトルらしさとは「主役感」、写真のキャプションらしさは「黒子感」である…というように、単純に文字を大きくしたり太くしたりするだけでの差別化ではない、「らしさ」の出し方を学べます。
「色」はまさに色の基本知識。
三原色やトーンの説明から、配色のコツ。この辺は配色の本や色彩検定のテキストではお馴染みなのですが。
大事にしたいと思ったのは「色を左脳的、右脳的に考える」ことです。
左脳的というのは、機能性。他の要素との差別化や、ある要素に注目させる、色によってグルーピングをするという意味。
右脳的というのは、情緒性。五感に訴える色のイメージ。例えば、黄色や黄緑色は酸っぱい味を想像させ、柑橘の香りを連想する…といった具合です。
色と連想は、自然となんとなくやってしまっていることが多いですが、色をきちんと知ることはデザインだけでなくイラストにも役に立つので、意識して色を選択できるようになりたいと思います。
「写真」は、何を主役に画面を切り取るか、という構図やトリミングについて。
写真は難しいですよね…
わたしの場合は、ほとんど用意された写真を当てはめてくことが多いので、写真の構図にものすごくこだわったり写真を吟味して選んだりがあまりできないということもあり、この節は苦手分野です。
ただ、同じ写真を使いながらも、どれを主役にするかで伝えられるストーリーが変わるという例は、Webでも参考になるなと思いました。
「グラフとチャート」、これはWebでも活躍する話でした!
データの種類によってどんな形式のグラフを選ぶか。データを強調するにはどんな方法があるか。
データをミスリードしないためにするべきでないこと…という、そもそものグラフやチャートをデザインで使用するための基礎的な知識や、
よくある基本的なグラフ・チャートの形から一歩出て、デザイン性や比喩的なグラフのアイデアなど、見ていて楽しい節でした。
Webサイトでも、データを載せることで説得力が増します。
jQueryで動きのあるグラフを表示できたりと、できることの幅も多くなりました。
ただ豊富な種類のグラフやチャートを目の前にすると、一体どれを選べばいいのか迷って、結局円グラフか棒グラフばかり…ということもあります笑
どんなデータにどのグラフがしっくりくるのか、きちんとわかっていればデータの見せ方の表現も豊かになりますね。
Webデザイン視点で見て
冒頭に述べた通り、本書はDTPがメインの本です。
項によっては、Webでは適用が難しい紙ならではの話もありましたが、随所でデザイン力を高めるためのヒントはたくさんありました。
紙は決まったサイズにデザインと情報を収めないとならないため、時にテキスト情報をうまく取捨選択したり、非言語に変換することも多くあります。
Webサイトは決まったサイズという制約がない上に、むしろある程度はテキスト情報が必要で、SEOの観点からも文字コンテンツ量が少なすぎるのはあまりいいことではありません。
両者とも媒体によって見せ方、見え方、媒体そのものの機能という面で違いがあるため、表現方法の選択は媒体に合わせたものであるべきです。
しかし、デザインする上で「情報を伝える」「狙った印象を与える」という点については、共通していますよね。
Webデザインでもこうすることでぐっとクオリティがあがって見えるのではないか。
インフォグラフィックをもっとうまく使えるようになるのではないか。
これからはこういうところ気をつけてデザインしてみよう、と今後のデザイン業務への意識変化にもなりました。
また、最近のWebデザインは、CSS3やjQuery等の進化により、レイアウトや表現がかなり自由にできるようになってきたということもあり、より「紙チック」なレイアウトのデザインが増えてきたように思います。
Webだから、紙だから、というデザインの垣根がどんどん低くなってきていると感じます。
Webに携わってるからこそ養われたWeb脳も大事ですが、Webらしさ(Webっぽさ)にガチガチに固執せず、DTPの柔軟性も取り入れていきたいという思いにぴったりとくる、満足な1冊でした!